その5 ビジネス関連発明とIoTに関連する特許分類について
特許調査の出来栄えの合格点が70点であるとしたら、70点以上の調査を行っていれば事業活動に影響があるような問題は起こりにくく、問題が発生したとしても致命傷に至ることは少ないと思います。基本プロセスを、手を抜くことなく実施することで達成できる70点の特許調査を、80点に、さらに90点にレベルアップさせるためには、基本プロセスのまわりに枝葉として存在する些細な工夫を一つ一つ積み上げる必要があります。
この講座では、特許調査の精度を高めるための細かなテクニックを、一つずつ取り上げながら、実際の事例を交えて解説していきます。
5.ビジネス関連発明とIoTに関連する特許分類について
IoT(Internet of Things)関連技術の国際特許分類(IPC)である「G16Y」は、2020年1月に新たに発効され、その後、FIについては2020年4月に新設され付与が開始されています。
「G16Y」の細分類項目としては、業種毎の細分類「G16Y10/?」、情報の種類毎の細分類「G16Y20/?」、目的毎の細分類「G16Y40/?」などがあるので、調査するIoTテーマに関連する細分類を特定して検索に用いると良いかと思います。
IoTに関する特許分類としては、2016年に新設されて付与が始まった、【IoT広域ファセット分類の「ZIT」】が思い浮かびますが、G16Yの新設により、ZITが付与された案件については、「G16Y10:業種ごとに細分化された分類」に機械的に付与し直されております。G16Yの運用を始めたことにより、以前のIoT広域ファセット分類の「ZIT」の付与は2022年4月に停止されています。
また、IoTに関連する特許出願としては、1999年頃から数年間にわたりブーム的に多くの出願が行われてきたビジネスモデル特許(ビジネス関連発明)があると思います。
ここでは、G16Yに加えて、ビジネス関連発明の特許分類(FIとFターム)について紹介します。
■ビジネス関連発明のFI
| 現行分類 | G06Q:管理目的,商用目的,金融目的,経営目的,監督目的または予測目的に特に適合したデータ処理システムまたは方法;他に分類されない,管理目的,商用目的,金融目的,経営目的,監督目的または予測目的に特に適合したシステムまたは方法 |
| 旧分類 | G06F17/60:管理目的,業務目的,経営目的,監督目的または予測目的のデジタル計算またはデ-タ処理の装置または方法
G06F15/21:管理または業務用のための計算部分の設計または構成 |
■ビジネス関連発明のFターム
| 現行分類 | 5L049:管理・経営・業務システム,電子商取引(カテゴリ:電子商取引)
5L055:金融・保険関連業務,支払・決済(カテゴリ:電子商取引) |
| 旧分類 | 5B049:特定用途計算機 |
上記に示した分類コードの細分類や周辺の分類を確認して、調査対象となるビジネスに関連する特許分類を特定します。
例えば、「チケットや座席の予約システム」について調査する時には、以下の新旧のFIとFタームを特定して指定する必要があります。旧分類を指定しないと、関連する古い特許公報が抽出できないかもしれません。
□FI指定検索
| G06Q10/02:予約(例.切符,サービスあるいはイベント)のためのシステムまたは方法 | 5,361件 |
| G06F17/60,146A:興行に関するもの(チケット予約等) | 759件 |
| G06F15/26:座席予約のためのデータ処理装置 | 558件 |
| 論理式:[G06Q10/02/FI]+[G06F17/60,146@A/FI]+[G06F15/26/FI] | 5,362件 |
□Fターム指定検索
| 5L049BB64:電子商取引による予約 | 2,925件 |
| 5B049CC06:予約(電話等によるものを含む) | 1,102件 |
| 論理式:[5L049BB64/FT+5B049CC06/FT] | 3,449件 |
特許分類を使った検索を行うことで、網羅性を高めながら、ノイズが増えるのを抑えることができますが、上記の例のように、新たな分類が新設されたり、改廃により旧来の分類コードが、新しい分類コードに置き換わることがあります。
したがって、特許分類を活用した検索を行う際には、分類の新設、改廃に注意を払う必要がありますし、確認された新設や改廃に合わせて、SDI検索の検索式についても定期的に見直す必要があります。
今回の特許検索講座の解説は以上です。次回は「その6 公開と登録のどちらの公報を見るべきか」についての説明をします。
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