その8 数値限定項目のチェックは表とグラフも見る

特許調査の出来栄えの合格点が70点であるとしたら、70点以上の調査を行っていれば事業活動に影響があるような問題は起こりにくく、問題が発生したとしても致命傷に至ることは少ないと思います。基本プロセスを、手を抜くことなく実施することで達成できる70点の特許調査を、80点に、さらに90点にレベルアップさせるためには、基本プロセスのまわりに枝葉として存在する些細な工夫を一つ一つ積み上げる必要があります。

この講座では、特許調査の精度を高めるための細かなテクニックを、一つずつ取り上げながら、実際の事例を交えて解説していきます。

8.数値限定項目のチェックは表とグラフも見る

特定の数値項目の特性値が具体的に記載されていることをスクリーニングする際には、特定のキーワードをハイライトさせる「ハイライト機能」だけに頼ることなく、ハイライト機能が使えない表やグラフの画像の中に記載されている部分を目視でスクリーニングする必要があります。図17と図18を使って、具体的に解説します。

スクリーニングで抽出したい内容は、『濃縮果汁』と『パック』という2つのキーワードなのですが、この2つのキーワードは、全文テキストデータの中には含まれておらず、【表3】の画像データの中にしか含まれていません。テキストデータとして検索することが可能である、段落番号【0051】の部分には、同様に抽出したい内容である、『ビタミンB2』と『ビタミンC』と『飲料』のキーワードが含まれていますが、『濃縮果汁』と『パック』というキーワードは、【表3】の画像データの中で記載されているのみであり、公報全文テキストデータを対象とするキーワード検索ではヒットしません。

図17 引用文献2の実施例2の説明部分

スクリーニングを実施する際には、「ハイライト機能」を使ってスクリーニングを実施すると、図17や図18で示したように、『ビタミンB2』と『ビタミンC』と『飲料』のキーワードはハイライトされますが、『濃縮果汁』と『パック』の部分は画像データでありハイライトされません。ハイライトされた部分だけに注目してスクリーニングを実施していると、【表3】の中に記載された『濃縮果汁』や『パック』を見逃してしまう可能性があります。

構造物に関する調査テーマの場合は、表や図面に記載されているテキストに注力するケースは少ないと思いますが、食品や化学のテーマの場合には、配合表や化学構造が画像で表示されるケースが多いかと思います。

図18 引用文献2のテキスト全文出力

そのため、食品や化学の組成や配合をテーマとする特許調査のスクリーニングを実施する際には、図18に示したような、全文テキストと図面がフレームで区画された詳細表示画面ではなく、図17に示したような紙公報イメージ表示に切り替えてスクリーニングを実施することをお勧めします。実施例の配合を順番に確認する際にも、テキストの説明部分に続けて配合表の画像が表示されている紙公報イメージの方がスムーズに内容把握ができるのではないでしょうか。

さらに、別の事例を図19と図20を使って説明します。この事例では、『特定波長範囲での光超過率が40%以下』であり、『Lidarで使用するレーザー光の波長の光透過率が70%以上』であることが記載された公報を抽出することを目的としています。別の見方をすれば、「波長」と「光透過率」が数値項目であり、『380~950nm』や『40%、70%』が具体的数値ということになります。したがって、検索式で指定する概念は「波長」「光透過率」にとどめて、具体的な数値は検索式では指定しません。もっとも、数値は特定範囲の始点と終点の値であったり、○○以上、△△以下のように臨界点を示す数値であるので、具体的な数値を指定するのは困難であります。

したがって、スクリーニングの際に注意すべき点は、特定の数値項目とその特性値はテキストデータには含まれていないことが多いということです。スクリーニングを実施する時には特定のテキストをハイライトさせることで、ハイライトされている部分に着目してスクリーニングを行うと思いますが、表やグラフの画像に含まれている数値項目名や数値はハイライトされません。特定の数値項目とその特性値をスクリーニングする際には表やグラフの画像データも漏らさずスクリーニングする必要があります。

具体的な例を見てみましょう。図19に示した【表1】の画像データには、「各波長での光線透過率」の部分に具体的な波長nmの値と、透過率の数値が記載されています。この【表1】の中の「波長」や「光線透過率」の記載はハイライトされることはありません。

図19 引用文献の【表1】の画像から読み取れる数値

さらに、図20に示した【図1】の画像データには、横軸が「波長nm」で、縦軸が「透過率%」のグラフが示されています。この【図1】の中の「波長」や「透過率」の記載はハイライトされることはありません。

図20 引用文献の【図1】の画像から読み取れる数値

図19や図20の事例をご覧いただけば、テキストデータのハイライトだけに頼ることなく、表やグラフの画像データもしっかりとチェックする必要があることをご理解いただけると思います。

今回の特許検索講座の解説は以上です。次回は「その9 公表公報のサーチレポートを活用する」の説明をします。

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